
ラジオ広告の広告戦略ってどうやって決めるの?
ポッドキャストやradiko、voicyなど、インターネットを通じて音声コンテンツを配信するサービスが増え、ラジオも再び注目を浴びています。
しかし、そうは言っても、ただ出稿するだけでは自社の売上にはつながりません。もちろん、ラジオならではの戦略の立て方もあります。ここでは、ラジオの出稿戦略の全体像についてご紹介します。
もくじ
まずは、広告出稿の目的を決める
どんな広告にも通じることですが、ラジオ広告もまずは「何を達成するために広告を出稿するのか」を明確にすることから始まります。
もちろん、自社の増収・増益のためではあるのですが、具体的に「年間総売上○○円」や、「月間成約数○○件」「自社商品の認知度を上げる」など、部署全体としての目的をはっきりさせることで、その後の短期的な目標やKPIの設定につながってきます。
また、広告の手配をしている間に、判断に迷うことが少なからず出てきます。そういった際に、部署全体で目的が共有できていると、そこに立ち返って判断基準とすることもできますので、「なんとなくこうした」をできる限り減らすことにもつながります。
戦略と戦術の違い、説明できますか?
ビジネスの現場でよく言われるのが「戦略」と「戦術」の違いです。
この2には明確な違いがあるのですが、意外と混同している人も少なくないようです。具体的には、以下の違いがあります。
戦略=全体のシナリオ
戦術=シナリオ通り進めるためのオペレーション、手段、方法
この2つが混同してしまっていると、手段が目的になったり、プロジェクト全体の方針を決めるときに方法論を話し合ってしまい方向性が定まらなかったりと、おかしな方向に進んでしまいます。まずは戦略で全体図を描き、それに沿って進んでいくように戦術を組み立てていくようにしましょう。
現状を把握する
現状の把握には「自社こと」と「社外(市場)のこと」の2つの視点から見る必要があります。いわゆる現状分析と市場調査ですが、この2つを行う目的と、よく使われるフレームワークを紹介します。
自社の現状把握は「伸ばすべきところを探すため」
自社の現状把握で確認するべき主なポイントは「自社の顧客の分布」や「自社の強みと弱み」です。
購入者層をまとめたり、顧客アンケート等を集計して、自社の状況を客観的に把握することで、新たに獲得したい顧客層を洗い出したり、自社のオペレーションで改善ができそうなところや、強みのあるところを探すことができます。
これによって、自社で伸ばすべきところが見えてきます。
これらの分析をする際は、顧客リストの集計の他に、SWOT分析やPEST分析など、マトリクス型のフレームワークがよく使われます。どちらも、社内の要因だけでなく、社外の要因についても触れますが、状況を俯瞰して見るツールとしてウェブサイトや書籍でも多く紹介されている方法です。
市場の現状把握は「適切な顧客層を探し出すため」
前述のフレームワークは市場の分析にも用いることができます。ただ、それだけでは市場を正しく把握することは難しいでため、統計数字を上手に活用する必要があります。
お客様アンケートや、口コミサイトなども活用し、「顧客が望んでいること」をどこまで正しく把握できるかが、キャンペーンの成否を分ける要因となります。
ターゲットを決める
現状分析の結果をもとに、キャンペーンのターゲットを決めていきます。自社の顧客で割合が大きい層を狙うのか、新しい顧客層を狙うのかは、会社の方針などもあるでしょう。
ここで注力するべきことは、商品を購入するであろう人物像(いわゆるペルソナ)をできる限り細かく設定し、そのペルソナが自社の商品との接点をどこで持つのか、接触したペルソナがどういった行動をとるのかを時系列順に可視化(カスタマージャーニーの作成)をしっかりとしておくことです。
それにより、媒体の選定やクリエイティブ制作の際にブレが少なくてスムーズになるほか、広告テストの際もテストするべき項目が決めやすくなります。
媒体の選定
ターゲットが決まったら、そのターゲットが接触することが想定され、かつ目的が達成されうるボリュームが得られそうな媒体を選んでいきます。
ラジオだけ、webだけではなく、複数の媒体を併せて相乗効果を狙うこともできますので、それぞれの媒体の特徴を把握し、選定していくことが必要になります。
KPIと短期的な目標の設定
初めの「広告出稿の目的を決める」で設定した目標を達成するために通過する途中目標を決め、それを評価する指標を決めます。その評価指標がいわゆるKPI(重要業績評価指標/Key Performance Indicatorの頭文字の略)です。
ラジオ広告はwebのようにラジオCMがどれくらい直接購買に影響を与えたかを計測するのは難しく、様々な要因や、他の媒体の効果などと併せて評価することが多くなります。
一番わかりやすい指標は「問い合わせ」や「申し込み」など、ユーザーのアクション数の増減を見ることでしょう。また、問い合わせから成約に至った率(webでいうコンバージョン率)も、クリエイティブの改善を検討するうえで重要になってきます。
ほかにも、「地域」や「性別」からは、狙ったターゲット層と、実際にアクションを起こしている層にズレがないかなど確認することができます。
ちなみに、KPIは見る人の立場に合わせて粒度を変えることをお勧めします。
すべてのメンバーにすべての情報が必要なわけではなく、立場に寄って必要な情報は変わってきます。キャンペーンの統括責任者であれば、売り上げや、費用などの情報が重要ですが、クリエイティブ担当者であれば、放送日時とユーザーのアクションの相関関係や、素材とユーザーアクションの相関関係なども見るべきでしょう。
媒体ごとの予算と出稿ゾーンを決める
出稿する媒体が決まったら、どのように出稿するかを決めていきます。
ラジオの場合、出稿の仕方を検討する際に決めることは主に以下の項目です。
- 全体の予算と、放送局ごとの予算配分
- 放送期間
- 放送ゾーン
- タイムか、スポットか。放送局ごとのCMの尺の割り振り
例
1)ラジオ広告全体の予算額500万円
…ニッポン放送200万円、NACK5100万円、FMヨコハマ100万円、bayfm100万円
2)放送期間…2019/10/1~2019/10/31
3)放送ゾーン…月曜日から金曜日 10:00~20:00
4)スポットCMで、各局とも40秒:20秒=2:1の本数になるように
この他に、「午前中を厚めに」や、「1週目と3週目は少なくして、2週目と4週目に多くしたい」など、細かいオーダーも可能です。その場合、先に他の広告主で枠が埋まってしまう可能背がありますので、早めにオーダーしましょう。
また、スポットCMには、曜日や時間帯などといった放送ゾーンを指定する場合に、ターゲットに合わせてよくつかわれるパターンがあります。
「全日型」「コの字型」「逆L型」など、それぞれの線の引き方と特徴も確認しておくと良いでしょう。
クリエイティブの制作
目標、ターゲット、が決まったら、いよいよクリエイティブの制作です。
まずはライターへ原稿作成を指示をします。ここで、ターゲット設定時に作成したペルソナの他に、トンマナ(クリエイティブのルール)も伝えておくようにしましょう。
並行して、収録のスケジュールをおさえ始めましょう。人気のナレーターさんだとスケジュールがすぐ埋まってしまいますので、早めに仮押さえをしておくことをお勧めします。
原稿、収録スケジュールが決まったら、収録を行い、その後録音した素材を編集し、完パケ(納品形式にした音源)にし、納品します。
これらの広告の企画、音源の制作、CMの進行管理は別の会社が行うことも多いのですが、株式会社Incretyをはじめ、広告代理店の中には、すべてを一社で完結できる会社も存在します。自社のリソースに合わせて、依頼する会社を検討してください。
ラジオ業界にもリアルタイムマーケティングの波?
CMは予め収録したものを放送するので、CMそのものをリアルタイムに差し替えたりすることはできませんが、インターネットやSNSと連動したキャンペーンを展開している企業も増えてきています。
また、ラジオ業界もデジタル化が進んでいて、オーディオアドのほかに、radikoのリアルタイム視聴データを取得するダッシュボードの開発もされており、いずれこれらのデータの開示やサービスの提供が進めば、より詳細に反響を分析することができるようになってくるでしょう。